監督:中村高寛
終戦から約50年間横浜の街に立ち続けたメリーさん。白いドレスに真っ白の化粧で多くの人の目を引いた彼女は、95年突然姿を消し伝説となった。そんなメリーさんの足跡を追いながら、戦後の日本を辿るドキュメント。
この作品は、ずっと横浜に住む人、メリーさんを一度でも見かけたことのある人にしたら、とても感慨深い
ものでしょう。
私は2000年に横浜に来たので、メリーさんという人を知らないし勿論見たこともない。
だけどこの街に住んでいる限り、この街の景色の一部とまで言われた彼女のことを知りたくて、
この作品を見てみました。
太平洋戦争直後、敗戦国の日本は混乱気味で、当時の横浜は多くの米兵でまるっきりアメリカ
そのものだったそうで。
そして、日本人男性が生きる気力を失い路頭に迷う中、自分が生きるため、家族を生かすために
自らの体を外国人に売っていた女達がいたのです。
彼女達は「パンパン」と呼ばれ、それはそれはエネルギッシュだったとか。
メリーさんと名付けられた彼女もその一人。
でもその生い立ちは不明で、当時から他の女性とは違う雰囲気を醸し出していたらしい。
上品な言葉遣いにフリフリの白いワンピース。つばの大きな帽子に柄の長い日傘。
そんな彼女は当初は、「皇后陛下」とか「キンキラさん」と呼ばれていました。
又、プライドが高く美しかった彼女が相手にするのは将校以上の身分の殿方だったとかで、彼女に声を
掛けられるのは光栄だったとも。
そんなメリーさんは、横須賀から横浜に流れ着き、その後住む家もないまま横浜の街に暮らし続けます。
しかしいつしか年老いて、薄かった化粧が段々濃くなり背中が曲がり、奇異な姿となっていったメリーさん。
住む場所も無く人々から避けられても、何故メリーさんはあの独特な姿で、そして横浜を離れなかったのか・・・・
愛した人を待ち続けていたのか、それとも、横浜という街が彼女の栄光の場所なのか・・・
今では跡形もなくなった戦後の日本。
私が住むこの横浜は、その頃良くも悪くも、最も活気に溢れていた場所だったのでしょう。
米兵と日本人女性の間の恋模様、人間ドラマがあり、多くの人が傷つき、そしてまた強かに生きていた街。
そんな街、横浜で生きたメリーさんの存在、メリーさんの伝説は、今では考えられないかつての日本の姿を
映し出します。
戦争で負けてボロボロになって、それでも女達が体を張って働き家族を養っていた・・・
それは私達日本人の大切な歴史の1ページ、忘れてはいけない日本の過去なのです。
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