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映画、読書感想などボチボチ書いていきます★
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『棺に跨がる』



西村賢太作品の中の北町貫多&秋恵シリーズの完結編だそうで。

同棲相手の秋恵との愛憎の日々を送ってきた主人公貫多は、いよいよ取り返しのつかない
暴力を秋恵にふるってしまってからのお話。
期待通り。
久々の西村賢太節に夢中になって一気に読み終えた。

西村賢太作品を最後に読んでだいぶ経つけど、つい先日まで貫多と秋恵のドラマに
はまってたかのように何の違和感も無くすぐに入っていけた。
それぐらい私は貫多と秋恵の物語に強い印象を受けてた様で、本作品もまた
貫多のクズっぷりが西村賢太独特の描写で描かれ楽しかった。

私小説なので当然主人公=西村賢太。
私小説と言っても多少脚色しますなんて本人さん言ってたけど、多分ほぼ実話だろうし、
それを思うとよくもまぁこんな己がクズっぷりを世に披露出来る事だと改めて感心。
でもなんか憎めない。
絶対お付き合いしたくないけど憎めない。

この作品で秋恵シリーズが完結と言うのは何とも寂しい感じがするけど、
そりゃまぁ秋恵さんが持ちませんわな。
こんな男と1年近く同棲したってだけで驚きw 
でも、未読の西村作品でまだちょこっと秋恵さんに再会出来そうな感じがするので
楽しみにしとこう。

『火花』



又吉直樹著。第153回芥川賞受賞。
若手漫才師と先輩漫才師の芸人としての日々が描かれた物語。

芸人又吉らしい、芸人とは、漫才師とはを主人公の感情を通して追求したお話。
相方の綾部は自虐してるけど、漫才師生活を経てこその作品なので綾部の存在は
無駄じゃないって思ったw

本作品が芥川賞受賞に値するかとかはさっぱり分からん。
芥川賞作品はいくつか読んだけど、私が面白く感じたのは「苦役列車」だけで
それも受賞に値してるのか分からんし。

で、本作品が楽しめたかと言うと…
まぁ、大阪育ちでお笑い好き、昔から破天荒で破滅的な芸人さんを見てきたって
点では入りやすかったかも。

当然純文学なので眠くなる人は眠くなるかもしれない。
でも、情景描写がとても美しくそれが芸術的と言えばそうで、それを芸人又吉直樹が
書いたと思えば凄いなって素直に思った。
内容的にそこそこ楽しめたものの、結末があまりに意外過ぎてそれをどう捉えるべきかが
難しいところやなぁ…

『ひそやかな花園』


ひそやかな花園ひそやかな花園
(2010/07/24)
角田 光代

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子供の頃に毎年参加していたサマーキャンプの意味に疑問を抱き、
そこに秘められた真実と対峙しながら自分探しをしていく7人の若者の物語。

角田さんらしい作品。
『八日目の蝉』とはまた違った角度から、家族とは何か、親とは、血縁とは…を考えさせられる。

子供を持つ事って、とてもハードな事なんだよね。
幸せな事だけどハード。
育てる側にとってもハードだけど、産み落とされた側にとってもハード。
「幸せをみくびっていた」って言葉が作品中に出てくるんだけど、我が子の幸せって、
実は血の繋がった親でもはかる事は出来ないんだよね…

やっぱり角田さん作品好き。
家族の事、特に母子関係をテーマに書かれる事が多いから共感しやすいし、
綺麗事では無くちゃんと人間の裏側も描いてくれるし。
『八日目』を超える感動はさすがに無いけど、本作品も楽しめました。

『プリズム』


プリズム (幻冬舎文庫)プリズム (幻冬舎文庫)
(2014/04/24)
百田 尚樹

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ある資産家に家庭教師として雇われた女が、その家の庭に住む
解離性同一性障害の男に翻弄される物語。

この話しの面白い所は、主人公が解離性同一性障害の男を病気だと、
多重人格だと分かっていながら、その男の中の一人の人格と恋に落ちてしまうところ。

顔かたちは同じでもその時々によって、プリズムの様に全く違う個性を見せる男…
その中に棲む完璧な人格を好きになってしまう主人公。
また、男の中に棲む何人かの人格も主人公を好きになり、
ほんとは一人の女と一人の男の話なのに、まるで一人の女と複数の男の
ややこしい恋愛みたいな感じ。

解離性同一性障害がどういう病気か、原因、症状、治療法なども詳細に綴られつつ
多重人格者との複雑で儚い恋物語が描かれなかなか面白かった。

でも私、百田さんの作品は実はあんまり好きく無いかもしれない…
話は面白いんやけど、表現があんまり好みじゃないかも…
百田作品は3作目なのでもうちょい読んだらまた変わるかもやけど。
登場人物の気持ちの流れの描写とかいまいち…
話は面白いけど登場人物に魅力を感じにくい…
百田さんは普段は汚い関西弁を吐くおっちゃんやけど小説は美しくと言う人なので、
その綺麗さがあかんのかしら…
私が汚いからなぁw

『永遠の0』は素晴らしいです。
夢中で読んだし泣けたんやけど、実は私の好みかと言えば違う。
ただ、あの作品は小説として面白い云々と言うものでは無く、
一度は読んだ方が良いって言う種類のもの、私の中では。
ま、また機会があれば他のも読んでみる。

『ほかならぬ人へ』


ほかならぬ人へ (祥伝社文庫)ほかならぬ人へ (祥伝社文庫)
(2013/01/10)
白石 一文

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第142回直木賞受賞。

名家に生まれながら強いコンプレックスに苦悩する主人公が、恋愛、結婚、
様々な出会いを通して思う人生の意味、本当に大切な人とはを描いた作品。
もう一遍の『かけがえのない人へ』も同様、主人公にとっての大切な人とは、が描かれている。

この二編、『ほかならぬ』と『かけがえのない』の共通点は、主人公が申し分の無い
家柄出身でありながら家族を愛せず、人生を謳歌出来ていないところ。
違いは前者は苦悩しながらも生きる意味、ベストパートナーの意味を探り続け、
後者は流されるまま生きる中ベストパートナーに気付くと言う感じ。

生きる姿勢や人との出会いに於いて思い入れが違うそれぞれの主人公だけど、
どちらもいつかこの人こそ自分にとってベストだと気付く時が来る。
でも人生は皮肉…

物語中の文言にもあるけど人生のベストパートナーだと分かる「証拠」ってなんでしょうね。
それがこの二つの話のキーなんだけど。
結婚相手が自分のベストか、皆一応それは思うだろうけど、本当にベストかなんて分かる訳が無い。
結婚を後悔してる友人がどれ程いる事か…
でも彼女達もその時はその人がベストだと思ったんだと思うし。
そして、結婚当初に「証拠」とやらがあったとしてもその定義も変わったりするし。

白石作品はこれで二つ目。
確か前の主人公も恵まれた環境にいながら悶々してて現代版人間失格みたいって
思った覚えが。
この手の主人公の話は嫌いじゃない。
その悶々が面白いし、前向きに生きていくヒントにもなる。
でも白石さんの文章は時に長々と説明臭くて入って来にくい箇所があるのも正直なところ。

また、主人公がボンボンお嬢ちゃまだからか、白石作品が苦手って人もいるみたい。
私はまだ二作しか読んで無いし、もちょっとチャレンジしてみようかな…

『夏の終り』

夏の終り (新潮文庫)夏の終り (新潮文庫)
(1966/11/14)
瀬戸内 寂聴

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妻子ある男と若い元彼の狭間で揺れる女を描いた作品。
映画観たいけどまず原作からと思って。

瀬戸内寂聴作品は初だけど、やはり彼女が送ってきた人生が映し出された
物語なんでしょうね。
もう一つの物語「雉子」と言う作品も同様。
あ、雉子は彼女の体験そのものか。

そしてその二つの物語共に私とは全く違う、私には全く共感出来ない女の話。
でも、そう言う女が存在するのは分かるので面白かったけど。
なんちゅうか、今で言うと肉食系って言うんですかね。
良く言えば愛が多い女…男への愛が多い女。業の深い女。
男を惑わすのが得意な女の話。

相手に家庭があっても自分に特定な人がいても、どんな状況でも本能のまま
走れるところは羨ましい気もするけど、子供が出来ても走ってしまうのは
罪が深すぎるよなぁ…

『べっぴんぢごく』

べっぴんぢごくべっぴんぢごく
(2006/03/18)
岩井 志麻子

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明治の岡山、乞食の娘シヲが村の分限者の養女となってから続いて行く、
その家に生まれる女達の因果を描いた話。

おもろい…キモ怖いけどおもろい。
ぼっけぇおもれぇわ。

明治から平成、岡山のとある旧家の女達…別嬪と醜女の順で生まれる女達の因果、宿業…
絶やしたくても絶やせない女の血。
繰り返される女達の奇妙な人生。
そして彼女達に纏わりつく異界の者達… 

岡山弁たっぷりの、陰鬱で猥褻でおどろおどろしい志麻子節炸裂な話。
彼女の作品には私小説、現代物、舞台がアジアの物などがあるけど、
私はやっぱり岡山の古い話が一番好き。

本作品を読みながら、何故この手の作品に惹かれるのか気付いた。
母の実家を思い出すのだ。
広島の母の実家。幼い頃に何度か行った田舎。
家の前は田圃、裏は山の斜面、隣は暗い竹藪。
昼も薄暗い不気味な土間、黴臭い蚊帳と布団、街灯の無い夜の闇…
それらは幼い私を恐怖の妄想で包み込んだ。

そして母は私が幼い頃からその暗い生い立ち、親戚との因縁を語り続け、
私にとってはそれら=広島の家と言う事で一層陰鬱な印象となった。
でもやはり私の体にも確実に広島のあの家の血が流れている。
だからか、志麻子さんの岡山の作品を読んでいるとどこか懐かしい気持ちになるのだ。

村社会、親戚同士の軋轢、血脈の因果など、核家族に生まれ都会で育った私には
理解し難い遠い世界の話だったけど、この年になって志麻子さんの作品を読むと、
何故かその昔自分もその場にいたような気持ちになる。
母の実家は嫌いだったのに、薄暗い土間で言い知れぬ恐怖に怯えていた自分が懐かしくなる…



『深爪』

深爪深爪
(2000/07)
中山 可穂

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人妻を愛し翻弄された女、その女の後に別の女を愛し家庭を捨てた女、
妻を女に寝とられた男、それぞれの愛憎物語。

何も知らず普通の恋愛物と思って読み進めてたらなんかおかしい…
主人公の一人称が「私」で絡みの描写も男女のそれとなんか違う…
そこで百合の話だと気付いた…

私は当然ノンケだけど同性愛ものが特に嫌いと言う事は無く、またそう言う
人達の心理に大いに興味はある。

これまでレズビアンものは映画などでもあまり見た記憶が無く…
『ボーイズドントクライ』はそうなんかな…
だからどんなものかと読んでいく内に、なかなか面白くて結局一気読み。

ま、同性であろうがその愛や嫉妬する気持ちは異性の恋愛と同じで。
でも本来同性愛の人が自分を偽って結婚しても、自分の本来のセクシャリティに
目覚めてしまうと大変なんやなぁと思ったお話。
女性にときめいたり女性相手に興奮したりはさっぱり分からんけど、
分からないから逆に面白かった。

不倫相手が男であろうが女であろうが、子供を犠牲にする事だけはいかん。
それだけはいかん。
ところで著者の中山可穂さんって人もやはりレズビアンなのね。
ま、そうやろね。

『脳男』

脳男 (講談社文庫)脳男 (講談社文庫)
(2003/09/12)
首藤 瓜於

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連続爆破事件の容疑者が追われる中ある青年が逮捕される。
無表情で不思議なその青年と爆弾事件の真実を探るサスペンス。

来年映画が公開されるとか。って事で読んでみた。
まぁまぁおもろかった。
盛り上がりのシーンはそりゃ映像にしたら盛り上がるだろうなって感じで。

一応主人公は人間で、理由があって「脳男」な訳だけど、ちょいアメコミヒーロー
みたいな感じでもあり。
物語はそんな痛快な物じゃないけど脳男があまりに人間離れし過ぎてて…
哀しいヒーローみたいな。

本作品はいかにも続きがありそうな終わり…と思ったら『脳男2』があったのねw 
読んでみよ。

『花の鎖』

花の鎖花の鎖
(2011/03/08)
湊 かなえ

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同じ町を舞台にした3人の女性の物語。同時進行に進む3人の女性の話。
住む町も出てくる店も同じだけど3人それぞれにドラマがあり、それぞれ先が知りたくなる物語。
3人の女性がどうなっていくのか読み進めていく内に…
「花の鎖」の本当の意味が見えてくる。

その本当の意味が見えた時、『イニシエーションラブ』の謎が解けた時…程では無くても
少しそれに近い感覚で目の前が開けた感じがあった。
そう言えばヒントになる部分あったのよねぇ…あたしが鈍感なのかw 

いずれにしてもその謎が解けるまで読者を惹きつけ、最後は感動させる湊さんはさすが。

『深く深く、砂に埋めて』

深く深く、砂に埋めて深く深く、砂に埋めて
(2007/10/16)
真梨 幸子

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どんな男も虜にしてしまう元美人タレントの周辺で起きた事件を追う物語。
その事件のキーになるのは美人に翻弄され身の破滅を招く男たち。
何故男はそれ程までにその女に夢中になるのか、事件の真相は…
色々謎だらけで先を知りたくなるから一気読みは出来る。

でも結末は何となく無理やりそこに持って行ったって感じで、突っ込みどころも。
なんで?だから?それで結局何が言いたいんやあ~みたいな。

でも真梨作品っていつもドロドロしながらテンポ良く面白くもあるんだけど、
最終的にイマイチ何も見えてこないこと多いw

『二度はゆけぬ町の地図』

二度はゆけぬ町の地図 (角川文庫)二度はゆけぬ町の地図 (角川文庫)
(2010/10/23)
西村 賢太

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内容は「貧窶の沼」「春は青いバスに乗って」「潰走」「腋臭風呂」の4編。
いずれも著者の若い頃のお話。

面白い!やっぱり西村作品好き!
前に読んだ『どうで死ぬ身…』の方が高く評価されていてそれは分かるけど、
私は本作品の方が読みやすいし好き。

本作品中には著者が慕う藤沢清造氏の事は出てこなくて、若い頃の話ばかりが書かれている。
お馴染のそのキャラクター…無気力で怠惰でありながら強欲、天才的な責任転嫁、
滑らかに口をつく暴言の数々…
でも大罪を犯す勇気も無い気の小さい著者らしいその結末はいずれもやはりどこか滑稽。

特に「腋臭風呂」がおもろかった。
銭湯での体臭のきついおっちゃんとの出会い、その数十年後のやはり体臭のきつい風俗嬢との
出会いの話はほんとウケたw 
体臭のきついおっさんの件などは、ドリフ大爆笑を思い起こさせるほどユーモアに溢れてたわ。
下品な言葉のオンパレードだけどw