

2011年に27歳の若さで急逝したイギリスのシンガー、エイミー・ワインハウスの生前の姿を
追ったドキュメンタリー。
第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作品。
エイミー・ワインハウスとは…
イギリスの女性シンガーソングライター。ジャンルで言えば主にジャズ。
セカンドアルバムの「バック・トゥ・ブラック」は全世界で1200万枚以上を売り上げ、
第50回グラミー賞では5部門を受賞するなど、イギリスを代表するアーティストとなった。
そんな素晴らしい栄光を手にした彼女は、まだまだこれからと言う時に27歳の若さで急逝。
本作は、そんな彼女のデビュー前からスターになるまで、そして何故こんなに早く
逝ってしまったのかまでが、残されている生前の多くの映像によって描かれている。
私が彼女を知ったのは大ヒットした「Rehab」と言う曲で。
ハスキーな声と独特な歌唱、楽曲に一気に引き付けられ、彼女が並々ならぬ才能を持った
非凡なアーティストだという事はすぐに分かった。
また凄いアーティストがイギリスから出てきたのね~と思いましたよ。
が一方で、ネットに上げられる彼女のプライベートの画像と言えば、髪の毛も服装もメイクも
めちゃくちゃな様子で、その荒んだ私生活も目立っていた。
栄光を手にして潰れるアーティストはこれまでも多くいたけど、今の時代でもやっぱり
いるんだな… そう思いました。
そんな彼女のデビュー前、直後の、まだ純粋に音楽に夢中だった映像を初めて本作品で
見たのだけど、まるで自身の末路を予想していたかのように、いつかこう言うドキュメンタリー
作品を作るのを想定していたかのように、多くの鮮明な映像が残っていて、殆ど彼女の友人が
撮ったものだけど、何と言うか、時代だなーと言うか、何でもすぐに簡単に誰でも映像を収められる
時代ならではだなって言うのが最初に思ったこと。
そして改めて、彼女が急逝したことが本当に残念だと、何故自分の才能を信じ、もっともっと、
デビュー当時抱いていた音楽への純粋な気持ち、熱意を信じ、健康的な生活を取り戻して
くれなかったのかと言う気持ちが沸き上がった。
売れてからの彼女しか知らなかったけど、等身大のストレートな詞をムーディでJAZZYな
リズムに乗せてエレキを爪弾きながら歌うデビュー当時の彼女は本当にかっこよくて、
感動してしまったほど。
こう言う歌をこれからも聴かせてほしかった、こう言う姿をこれからも見せてほしかった
とつくづく。
歌は抜群に上手いし曲を作る才能もある。
が、その破天荒で繊細な性格が音楽人生の邪魔をした…
前述したように、これまでも多くのアーティストが栄光を手にしながら薬や酒に溺れ、
若くして命を落としている。
まぁ言わば、彼女もその類の人達のうちの一人となってしまったんだけど、それまでも
多くそういう例があるのに未だにこうなってしまうアーティストがいることが、本当に本当に
残念でならない。
ジャニス・ジョップリン、ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジム・モリソンetc...
いずれもその後生きていればどれだけ素晴らしい作品を生み出してくれたかと言う人達で、
彼らの急逝は音楽界にとって多大な損失。
そしてエイミー・ワインハウスも間違いなくその一人。
なんで…なんでそんなに自分を追い込むの…
大好きな音楽で認められて注目されて、大金が手に入って訳の分からない人間が近寄ってきて、
家を出ればパパラッチに追いかけられプライベートがほぼ無い状態になる。
人としての自分を見失いそうになるのは、おそらく今活躍してる有名人の皆が経験してる
ことでしょう。
そんな、栄光が生む混沌の中で生きていく中でどのようにして心も体も健全に保つのか、
自分自身を見失わずに暮らすのか、著名人皆さんそれぞれがそれぞれに試行錯誤してると思う。
エイミーにも、迷い、苦しみながらも、強くなってほしかった。
エイミーは、子供の頃に父親が家を出ている影響からからおそらく極度のファザコンで、
繊細な性格はその辺に起因しているのかもしれなくて、その為か異性関係も激しく、
飲酒も早い頃から習慣になっていて、暴飲暴食によって太っては食べて吐くを繰り返すようになり、
それらの生活習慣が彼女の体を蝕んでいったらしく。
そして何より一番の影響は、彼女の夫となった人物。
この男が薬の常用者で、彼の愛が欲しい故にエイミーも一時期薬を使い、それもまた、
間違いなく彼女の体を弱めていったのでしょう。
グラミーを獲った時彼女の夫は牢獄にいて、エイミーは栄光を手にしながらも、彼とドラッグが
無いなんてつまらない…と言い放ったほど、彼女にとっては音楽より夫と薬、と言う時期が
あった訳で、どんなに才能があっても、歌が上手くても、そういう人生を送ってしまうのなら
破滅は避けられないのかな…と。
ほんとに残念だけど…。
本当に濃く、短い人生だったと思うけど、彼女自身はどう感じてるのかしらね…。
今となってはそれを聴くことはできないけど、早く逝ってしまった多くのアーティスト同様、
エイミー・ワインハウスの作品も後世に、永遠に残る。
これからも機会があれば彼女の声を聴いていこうと思います。