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『暗渠の宿』

暗渠の宿暗渠の宿
(2006/12)
西村 賢太

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内容は「けがれなき酒のへど」と「暗渠の宿」の二篇。どちらも著者本人と女性との話。

「けがれなき…」は風俗嬢に入れ込んで金をだまし取られる話。
「暗渠…」は恋人との同棲生活の話。又いずれにも著者が尊敬して止まない作家、
藤澤清造の事が詳細に綴られている。

どうも私は西村さんのファンになったようで。
何だろなぁ…この人の書く文章にはなんか惹かれる。
古い言い回しなんだけど、やっぱりその下品でシニカルな表現にたまらなくそそられる。
本作も二篇いずれも著者のどうしようもない性格が災いしての話で、それがどうにも面白い。

自他とも認めるかなりの難しい性格で、だからたいがいの人とは上手くいかないのに
そのくせ人恋しくて、風俗では飽き足らず心の通った恋愛がしたくてでも結果失敗して…
そもそもこの方、別段イケメンでも無いのにちょいちょいご自分を大棚に上げて人を蔑む
と言う悪癖があるからねwそれがおもろいのよ

正直作品中に出てくる藤沢清造なる作家の事は興味無いんだけど、でも彼のその作家への
熱い思いも物語の一部ではあるから目は通すけど…って、愛読してても藤澤清造氏の事
そんな風に言ったら西村さんきっと「頭の足りんちんちくりんのおばはんがー!」って
激昂して私の事罵倒するんだろうな。あははw

『苦役列車』

苦役列車苦役列車
(2011/01/26)
西村 賢太

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第144回芥川賞受賞。性犯罪者の父親を持った若者の苦悩に満ちた生き様を描いた作品。

おもろかったー♪好き、この作品。主人公の若者はこの著者である西村さんの事らしく、
ほんまに?って思ってwikiってみたらほんまやったw 
この方は基本私小説を書かれてるのね。

父親が犯罪者と言うのはあるにしても、この主人公は実に自堕落でその場主義で他力本願。
どうしようもないし何をやってもダメダメなんだけど、私には何故か悲壮感が感じられなかった。
古い小説家に強い影響を受けた西村さんならではの独特な文面でありながら、お下劣でストレートな
描写が痛快。

主人公(西村さん本人)の恥ずべき内面が客観的な視点でいちいち明確に記され、
それがなんか可笑しくて… 
ほんとにほんとにアホでダメダメ過ぎるんだけど、主人公に降りかかる事全ては
身から出た錆である事を踏まえた上での展開に、やるせない哀愁さえ感じてしまった。

『月と蟹』

月と蟹月と蟹
(2010/09/14)
道尾 秀介

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昨年の直木賞受賞作品。父親を亡くし、母と父方の祖父と共に暮らす孤独な少年の物語。

これまで道尾さんの作品はちょこちょこ読んできたけど、直木賞作品だけあったやはり
一番面白かった。
孤独な少年達がその小さな胸で抱く人生の悲哀に、また泣けた…ほんま最近よう泣くww

祖父の苦痛、女である母への思い、唯一心を通わせた同じく孤独な少年との友情、
淡い恋心…子供目線からの恐怖、謎、感動、嫉妬…不器用で繊細な主人公の少年の
心の中に蠢くそれら様々な感情が、道尾さんらしい、陰鬱感たっぷりに重く描かれている。
賛否分かれるだろうけど私は結構好き。

『マザーズ』

マザーズマザーズ
(2011/07)
金原 ひとみ

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幼い子供を同じ保育所に預ける作家、モデル、専業主婦3人の母達のそれぞれの
母としての姿を描いた作品。

良かった。泣けた。金原ひとみ作品で共感したのも泣いたのも初めて。
でもさすがは金原さん。展開がちゃんと待っていた。
油断してたわw

表紙の帯で「母であることの幸福と凄まじい孤独…」と謳われてるけど正しくそう言う内容。
仕事を持つ母、持たない母、人生観、子育て観の違う母、3人それぞれの育児…
私は3人の中でもやはり専業主婦の母に共感するところが最も大きかったけど、
読んでて自分の事かと思えるほどだった。

本作品はやはり母であるか無いかで感想は変わってくるだろうし、また子供を持っていても
「子供って可愛くて子育てって楽しい」と思ってる人が読んでもただ不快なだけかもしれない。
この物語は子を持つ事の尊さ、我が子への限りない愛、と同時にそれらと同じ深さの孤独、
地獄が描かれている。

子育ては地獄だ。修行だ。
私しか頼る事の出来ないか弱く圧倒的な存在がある日突然目の前に現れ全てを変える。
殆どが自分の思うようにはいかず、多くのものを奪っていく。
と同時に自分の命を犠牲にしてでも守らなければと言う愛、無償の愛が生まれる。
母親は、その地獄と大きな愛の間で揺れ続ける。

子供が可愛い、子育てが楽しいと言う母と会うとそれは嘘に聞こえつつ、
酷い自己嫌悪に陥った。
でもこの『マザーズ』を読むとそんな自分を肯定とまではいかなくても、
慰める事が出来た。
と言うか…あの時の気持ちは決して正しくは無い…
でもあれも間違いなく母としての思いだった…そう思える。

金原ひとみ作品はいくつか読んだけど、だいぶ違う感じ。
やはり彼女自身が母になったからだろう。
これまでは彼女の脳内に繰り広げられる痛みを伴うグロテスクな描写が多く
読んでいてもなかなか共感出来なかったけど、初めて心にスッと入ってきた。
とはいってもやっぱり残酷な場面はあったけど…

『マザコン』

マザコン (集英社文庫)マザコン (集英社文庫)
(2010/11/19)
角田 光代

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主人公の母への思い、その思いを抱きながら今を生きる姿が描かれたオムニバス

背景やキャラは違うけど、共通してだいたい母親に良い思いを抱いていない主人公達。
どの話にもオチが無く中途半端に終わってる感あり…
なので何となく消化不良な気持ちが残るけど…

母親は間違いなく自分の人生に多大なる影響を及ぼし、人は大人になっても
尚母の影を追ってるところがある…そう思わされる作品。

角田さんは割とよくと母子をテーマにされる。
母性とか、子供から母への思いとか…
確かに母と子の関係って人間にとって一番深くて太い根っこの部分やからね…