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Something Better

映画、読書感想などボチボチ書いていきます★
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『べっぴんぢごく』

べっぴんぢごくべっぴんぢごく
(2006/03/18)
岩井 志麻子

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明治の岡山、乞食の娘シヲが村の分限者の養女となってから続いて行く、
その家に生まれる女達の因果を描いた話。

おもろい…キモ怖いけどおもろい。
ぼっけぇおもれぇわ。

明治から平成、岡山のとある旧家の女達…別嬪と醜女の順で生まれる女達の因果、宿業…
絶やしたくても絶やせない女の血。
繰り返される女達の奇妙な人生。
そして彼女達に纏わりつく異界の者達… 

岡山弁たっぷりの、陰鬱で猥褻でおどろおどろしい志麻子節炸裂な話。
彼女の作品には私小説、現代物、舞台がアジアの物などがあるけど、
私はやっぱり岡山の古い話が一番好き。

本作品を読みながら、何故この手の作品に惹かれるのか気付いた。
母の実家を思い出すのだ。
広島の母の実家。幼い頃に何度か行った田舎。
家の前は田圃、裏は山の斜面、隣は暗い竹藪。
昼も薄暗い不気味な土間、黴臭い蚊帳と布団、街灯の無い夜の闇…
それらは幼い私を恐怖の妄想で包み込んだ。

そして母は私が幼い頃からその暗い生い立ち、親戚との因縁を語り続け、
私にとってはそれら=広島の家と言う事で一層陰鬱な印象となった。
でもやはり私の体にも確実に広島のあの家の血が流れている。
だからか、志麻子さんの岡山の作品を読んでいるとどこか懐かしい気持ちになるのだ。

村社会、親戚同士の軋轢、血脈の因果など、核家族に生まれ都会で育った私には
理解し難い遠い世界の話だったけど、この年になって志麻子さんの作品を読むと、
何故かその昔自分もその場にいたような気持ちになる。
母の実家は嫌いだったのに、薄暗い土間で言い知れぬ恐怖に怯えていた自分が懐かしくなる…



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『白い薔薇の淵まで』

白い薔薇の淵まで白い薔薇の淵まで
(2001/02/05)
中山 可穂

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主人公の女性が美しい女性作家と恋に落ち翻弄される物語。

中山可穂さんなので勿論百合の話。
本作は前に読んだのよりも一層激しい女同志の恋愛。
痛みを伴う激しい恋愛。
しかし主人公は男の恋人もいてノンケのはずなのに、ほんとにここまで同性に
落ちるものかね…

物語の始まりと終わりのトーンに温度差があって、後半の展開からは
なんとなくやっつけ感が感じられる。
それもあって後味はいまいち…

『ヒミズ』

ヒミズ コレクターズ・エディション [DVD]ヒミズ コレクターズ・エディション [DVD]
(2012/07/03)
染谷将太、二階堂ふみ 他

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親に絶望する15歳の少年少女の心の闇、生き様を描いた作品。

これはまぁ何と言ってもベネチアで新人俳優賞を獲った染谷将太と二階堂ふみの
演技に尽きる作品。
キャストが殆ど『冷たい熱帯魚』に出てた人だったからなんかその続きみたいに
見えなくもなかったw

『冷たい…』にも出てたベテランキャスト陣がまた良い味を出しながら
主演の若い二人を盛りたてる。
作品としてどうかは置いといて、とにかく染谷くんと二階堂さんの若さ弾ける
必死な演技に魅せられる作品。
彼らが今後どんな素敵な役者さんになるのかと思わせてくれる作品でした。

『五月の独房にて』

五月の独房にて五月の独房にて
(2009/01/29)
岩井 志麻子

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同じ職場の女性を殺害するなどの罪で服役している女を描いた物語。

主人公はや美容院の敏腕マネージャー。
実母を憎み、その母の呪縛から逃げるかのように結婚し美容院に勤め出入り業者と不倫、
挙句売れっ子美容師を殺害しバラバラにして遺棄した女の話。

この作品、実際にあった事件を志麻子さんが脚色して書いたものだとか。
私自身この事件はすっかり忘れてたのでググってみたら、確かに犯行に至るまでの
過程などほぼ小説と同じ。
女同志でのここまでの残忍で猟奇的な事件と言う点など、志麻子さんはこの犯人に
深く興味を持たれたんだろう。

角田光代さんの『三面記事小説』同様、実際あった事件の背景や関係者の心理など、
作家さんのアレンジで書かれた作品すごく面白い。
本作品は志麻子さんなのでグロいところもあったけどやっぱり面白かった。
母に、男に、自分に関わる全ての人に責任転嫁し続ける女のなれの果て…

やっぱり私は岩井志麻子の表現が好き。
残酷で冷たくて美しい描写。
女のグロ作品でもそこら辺は真梨さんとは違う。
真梨さんも好きなんですけどもw
しかし本作品を読むと、母親の娘への影響の大きさに改めて恐怖。
気を付けないと^^;

『おとなのけんか』

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(2012/12/19)
ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット 他

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喧嘩した子供の親達のバトルを描いた作品。

面白い!
登場人物は子供の親の4人だけ、舞台は片方の家のみ。
そこで繰り広げられる4人の会話劇で、時間は短いけど充分楽しめる。
子供の事でのバトルから夫婦間のバトルまで、4人の大人が愚かしくおかしく喧嘩をしてくれる。

まるで舞台劇~と思ったらやっぱり元々舞台劇なのね。
こう言う作品は台詞が大事で役者の演技が見どころ。
そこはジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、
ジョンCライリーの名優達がたっぷり魅せてくれて正に演技合戦。
どの人も好きだけどやっぱヴァルツさんかな。

『チャイ・コイ』

チャイ・コイチャイ・コイ
(2002/06)
岩井 志麻子

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日本に恋人がいながらベトナムの青年に一目惚れし、深い関係になって行く過程を
描いた作品。

これまで読んだ志麻子作品に何度も登場したベトナムの愛人、その彼に何故惹かれたのか、
どうやって男女の関係になったのかがこの作品でよく分かった。

いわゆる官能小説。
志麻子作品はだいたいエロいけど、私が読んできた中でも最も描写が具体的で猥褻
じゃないかな。
いやしかし、猥褻と言うにはあまりに美しいと言うか…
確かに猥褻なんだけど、その描写を色鮮やかに彩る志麻子さんの筆力にまた私は圧倒
されてしまった。

彼女にとったら暑いベトナムで見るもの聞くもの、食べて飲むもの全てが愛人との睦事に
結びついていて、その一つ一つの表現が実に繊細で大胆で美しい。
寝たい男を思うだけで女はこんな事を思い、こんな風になり…
性描写より、欲情する女の心の襞を描いた極彩色な表現に私は酔った。

本作品も多分著者自身のお話だろうけど、よくぞここまで性癖を晒しちゃってw 
ま、多少脚色もあるやろうけど。
いつもの様に私は彼女を思い出しながら、なんでモテる?って思ったけど、
とにかくあの方は若い頃からフェロモンを発散してたらしい。
男だけが好む臭いを発散してたんだろう。

とにかくベトナムの愛人は、彼女にとっては関係を持った数多くの男の中でも
余程心に深く刻まれた人なのでしょう。
この作品でそれが改めてよく分かった。
女性が好む官能小説だと思います。お勧め。

『深爪』

深爪深爪
(2000/07)
中山 可穂

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人妻を愛し翻弄された女、その女の後に別の女を愛し家庭を捨てた女、
妻を女に寝とられた男、それぞれの愛憎物語。

何も知らず普通の恋愛物と思って読み進めてたらなんかおかしい…
主人公の一人称が「私」で絡みの描写も男女のそれとなんか違う…
そこで百合の話だと気付いた…

私は当然ノンケだけど同性愛ものが特に嫌いと言う事は無く、またそう言う
人達の心理に大いに興味はある。

これまでレズビアンものは映画などでもあまり見た記憶が無く…
『ボーイズドントクライ』はそうなんかな…
だからどんなものかと読んでいく内に、なかなか面白くて結局一気読み。

ま、同性であろうがその愛や嫉妬する気持ちは異性の恋愛と同じで。
でも本来同性愛の人が自分を偽って結婚しても、自分の本来のセクシャリティに
目覚めてしまうと大変なんやなぁと思ったお話。
女性にときめいたり女性相手に興奮したりはさっぱり分からんけど、
分からないから逆に面白かった。

不倫相手が男であろうが女であろうが、子供を犠牲にする事だけはいかん。
それだけはいかん。
ところで著者の中山可穂さんって人もやはりレズビアンなのね。
ま、そうやろね。

『人生はビギナーズ』

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(2012/08/03)
ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー 他

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ゲイである事をカミングアウトした父親の死後、両親の生き様を振り返りながら
新たな歩みを進める男のお話。

こういう話大好物。
人は皆完璧では無くどこかおかしい…誰かを傷つけたり自分も傷ついたり、
苦しみもがきながら生きていく。
でもどこからでもビギナーになれる…

誰かと生きるって相手が愛する人でも大変。
でもやっぱり愛する人の側にいたい。
側にいたいから、愛してるから、大変でも一緒に歩もうとする主人公と恋人が素敵でした。

クリストファー・プラマ―にユアンに好きな役者揃いだったし、淡々とした
人間ドラマだけど飽きなかった。

『8ミニッツ』

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(2013/01/23)
ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン 他

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列車爆破事故の犯人を見つける為、犠牲者の意識に入り込み列車内を追体験していく
男を描いたSFサスペンス。

不思議な話。
でも最初からラストまで一気に突っ走って行く感じの展開で飽きる事無く見れたから
まぁ面白かったかな。
オチで更に不思議な感覚になったけど。

映画の中で登場人物が未来を変えてしまうと言うのは禁じ手…みたいな意見を読んだけど、
そう言えば『スーパーマン』でもスーパーマンのパパが、人間の歴史を変えちゃいけない!
って言ってた。
でも結局好きな人救う為に未来変えちゃうんだけどw
この作品でも好きな人救う為に変えた感じ…

この手のオチを見るとしばらく自分で考えて、その後ネタばれ読んで、なるほど
そう言う解釈もあるのかと頷く。
それが面白い。
そして出来ればこう言うのは映画好きの友人と一緒に観て、あとであーでもないこーでもない
と言いたい。

『苦役列車』

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(2013/01/11)
森山未來/高良健吾/前田敦子

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西村賢太著、芥川賞受賞作品の映画化。
読書だけが趣味で、日雇いをしながら貧乏生活をしている若者の悶々とした日常を
描いた作品。

まぁ…こんなもんかな。
私の場合原作が好き過ぎるので、原作知らないで見た方が楽しめるのかなぁ…
でもま、悪くは無いと思うけども…

この作品は作者の独特な表現、描写が魅力なので、やっぱり映像化すると
原作から滲み出ていた独特の面白さはいまいち伝わり辛くなってる感じ。
でもそれはしゃあないわね。

主演の森山未来は、屈折した若者を見事に演じていたと思う。
西村賢太さんもお若い頃は確か痩せてたしねw

主人公の変てこぶりを際立たせる為に作られたであろう原作に無かった前田敦子のキャラは、
特に不自然な感じは無かったかな。
寧ろその他の場面で、なにこれ?みたいな変な場面があったけどw 
でもま、やっぱりこの作品は原作が断然いい。

『球体の蛇』

球体の蛇球体の蛇
(2009/11/19)
道尾 秀介

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遠い昔に起きた哀しい事故、そこにあるそれぞれの秘密、悔恨…それらに揺れながら、
痛みを抱えながら生きていく人々の話。

凄く良かった。久々に読書で泣いた。
道尾さんらしいと言えばそうだけど、彼の作品の中では一番良かったし読みやすかった。

誰も悪く無いのに皆が自分を責め、その思いに雁字搦めになり…
でもそこには愛があり、愛があるから苦しくなる。
何とも切ない話だった。
ハッピーエンドだったのが良かったかな。

『ツリー・オブ・ライフ』

ツリー・オブ・ライフ [DVD]ツリー・オブ・ライフ [DVD]
(2013/01/23)
ブラッド・ピット、ショーン・ペン 他

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成功を収めた中年の男が自らの人生を振り返りトラウマを乗り越えようとする物語…
が、独特の世界観で描かれた作品。

これは想像していた以上に難しいと言うか独特。
見る人を選ぶ作品。

命とは、人生とは、人間とは、信仰とは…それらのテーマが抽象的に表現されている。

厳格な父親、信仰深く優しい母親、共に父に反発した弟、そしてその死…
一人の男の人生を通して、人は何故苦しむのか、神に祈っていても何故理不尽な事が
起きるのか、その苦しみを乗り越えるとは如何なることなのかが壮大に、美しい映像で
描かれている。
哲学的な作品です。

『SHAME』

SHAME -シェイム- スペシャル・エディション [DVD]SHAME -シェイム- スペシャル・エディション [DVD]
(2012/10/02)
マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン 他

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性依存症の男の苦悩が描かれた作品。

うんなるほど…性依存の男の話って言うのは知ってたけど、タイトルが何故SHAMEか…
って言うのは主人公が性依存である自分を恥じているって言う意味やったのね。
仕事ができる良い男…でも実は変態…
めっちゃ良い男やのに…

作品前半ではこの男がどれだけSEXに執着してるのか、その趣味も何となくしか
分からない。
独身やったらまぁそれぐらいあるんちゃう?みたいな。
ちょっと元気やね、ぐらいな。
が、同じく酷い依存症の妹が家に転がり込んでから物語は加速して…
終盤はあらあらあら…

とにかく主人公と妹の闇は深く、両者とも異性と健全な関係が保てないし
そう言う自分達を追い込んでいる。
描かれて無かったけどこの兄妹、なんか哀しい過去がありそ。

主人公のマイケルファスベンダーが素敵♥
『Xメン』でしか見た事無かったけど渋くて良い。
SEXに溺れ、溺れる自分を恥じ、嘆き…
格好良い男が自分ではどうにも出来ない本能に翻弄され崩れていく演技が凄い。
終盤の濡れ場でのfinishシーンは素晴らし過ぎますわ。

あの濡れ場は、そこまで散々格好良い男だった男がその抑制出来ない本能を
本能のまま暴走させ、その本質をこれでもかと露わにした大事な場面。
そして終わった瞬間、彼はその快感と同時に自らの愚かしさにも苛まれ…
と言う思いがあのクールなお顔で絶妙に表現され、痛々しい程だった。

性生活や性癖ってのはごく個人的な事であり秘め事であり…
まぁ最近は堂々と発表する人も少なくないんだろうけど…
だから周囲に迷惑をかけないなら別に自由だと思う。
でも、社会的地位が脅かされたり、自らの身を滅ぼす程の事なら病院に
行った方がええな…って本作品を見て思いました。

『私小説』

私小説私小説
(2004/01)
岩井 志麻子

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ベトナムの愛人との逢瀬、その別れが綴られた著者自身の話。

前に読んだ『楽園に酷似した男』に登場したベトナム男と韓国男との事が更に
詳細に書かれた作品。
『楽園…』はある意味言葉遊び本だけど、本作品は彼女らしい表現もありつつ
より分かりやすい体験談になっている。

彼女の実体験はエロティックでかつロマンティック。
その描写も素晴らしい。
異国の良く分からない男を愛人に持つスリル、美しい年下の愛人への中年女の愛情、
母性、そして肉欲…
私は東南アジア系の男子にあんまり興味無いけど、でも、こう言う話は女性が好きな、
ある意味うらやまな話ですわ。

でも私はまた読み始めてすぐ、なんで岩井志麻子ってこんなモテるのぉ?て思ったw 
だって、本作品では彼女が高校時代から奔放な様子も書かれてて、その容姿は
昔から色香を振りまいてる如くに書かれている。
でも…眉毛無かったら枝雀師匠…顔ちゃうんやろなぁ…
フェロモンってやつかな…

『岡山女』

岡山女岡山女
(2000/12)
岩井 志麻子

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明治の岡山、愛人に左目を切られて霊感が強くなり霊媒師になった女の話。

哀しい霊媒師に様々な相談を持ちかける客、それぞれの謎解き話がオムニバスで綴られている。
ホラーと言ってもそんな怖くもなく…志麻子カラーの明治ロマンスピリチュアルサスペンス
って感じ。

これまで読んできた作品に比べればグロさもエロさも無く、心霊現象と言っても怖くなく
結構あっさりした感じがしたかな。
主人公の霊媒の女のキャラが何とも哀しく…自らの左目を奪い、自害した愛人の魂と
時折語らうその主人公に魅力を感じる作品でした。