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『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]
(2009/02/27)
坂井真紀ARATA

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監督:若松孝二 CAST:坂井真紀、ARATA 他

1960年代、激化していた学生運動を経て、何名かの若者が「連合赤軍」と称した集団を作り革命を実践しようと山岳ベースで集団生活を始める・・・・
1972年2月、長野県のあさま山荘で警察と銃撃戦を展開した連合赤軍の、そこに至るまでを描いた作品。

DVD化されないって思ってたけど良かった~ この作品、見たかったんです。

1972年、あさま山荘で繰り広げられた数人の若者と警察の激しい銃撃戦。
その様子がテレビで生放送され死者も出た、国民皆が注目した大事件。
逮捕されたのは、5人の若者・・・・「連合赤軍」と称された集団の若者。
1960年の安保闘争から始まった学生達の権力への激しい抵抗は、「共産主義革命」という大儀の元
武装化し、激化していき、そして起きた「連合赤軍事件」・・・・・
赤軍派と革命左派が合体して成り立つ集団が起こした、ショッキングな事件。
私は何故か、昔からこの事件に興味があった。

彼らの多くは有名大学を卒業したエリート。そんな彼らが様々な政治的イデオロギー、思想を持ち、国の
方針に疑問を抱くのは理解できる。
高等な教育を受けているからこそそういう疑問も持つのだろうし反発するのも分かるけど、何故人を殺めるまでに
至ったのか・・・・しかも、同じ志を持った仲間達を・・・・
彼らが逮捕されて以降激しい学生運動が沈静化していったのは、あさま山荘立てこもり事件だけではなく、
その後すぐに明らかになった、「山岳ベース事件」によるものが大きいだろう。
それは、リンチによって多くの若者が命を落とした内ゲバ事件・・・・

様々な経緯を経て赤軍派と革命左派とで合流し、「連合赤軍」を作った彼らは革命を遂行すべく山中で
アジトを作り、武装訓練を始める。
リーダーは、元赤軍派の森恒夫と元革命左派の永田洋子。
寒く狭いベースの中での彼らの共同生活は、激しい思想を掲げるリーダーの元、いつしかヒステリックに
なっていく・・・・
rengousekigun.jpg

彼らリーダーは、やたらと「総括」という言葉で、同志達に自らのそれまでの行動を自己批判する事を強要した。
「総括」を迫られたメンバー達は自分なりの総括をするも森や永田は納得せず、更に追い込み、最終的に
「暴力が同志の総括を援助する」なんていう訳の分からない理由を付けて、総括を迫られたメンバーに対し、
他のメンバーが暴力を振るうよう強制しだす。
そうして最初の総括を迫られたのは、恋人と連合赤軍に参加し、キスをしているところを永田に見つかって
しまった2人。
2人は激しい暴力を受け、極寒の屋外に放置される。
その後も次々と何だかんだ理由を付けられ総括を迫られ、中には「死刑」と言う事でその場で殺される
メンバーも出てくる。

永田洋子という人は、女性にしてリーダーでかなり激しい気性の持ち主。男性も驚くほどの残酷な面を持ち、
一方では幼児的な面も。と言うか、幼稚だからこそ残酷なんだろうけど。
お洒落などにも全く興味が無く自身の容姿にコンプレックスを持つ彼女は、美人の同志などに激しく嫉妬する。
ただそれだけ・・・・ただ美しいだけ、ただ永田より美しいだけで、鏡を見ただけで、髪を伸ばしただけで、
「総括」され命を落としたメンバーも。
森恒夫は、連合赤軍が出来る以前の運動の最中逃亡し、自己批判によって赤軍に戻ってきたという経歴
を持ち、良く分からない持論を高圧的な激しい口調でまくし立てては連合赤軍内においてカリスマ性を
発揮させようとしていた。
元々確固とした思想など無い彼は、おそらく自らの立場を保持するために、「総括」を開始したのだろう。

「共産主義革命」を遂行すると言いながら、仲間達を次々とを消していく彼ら。
勿論その意図は全く分からない・・・何故そこまでしなければいけないのか理解できない。
只分かるのは、そこにあるのは劣悪な環境の中で生まれた究極のストレスによる狂気だということ。
「総括」という名前が付けられたリンチ行為がリーダー達の、そしてメンバー達のストレス発散方法となり、
また、それをしないと自分もやられるという恐怖を生み、だから誰も止めることが出来ずにいた・・・
あさま山荘に立てこもり追い詰められた場面で、唯一未成年で参加していた少年が、「俺達みんな勇気が
無かったんだ!」と叫ぶシーンは印象的。
実際彼がそんな事を言ったかどうかは分からないけど・・・・

12人の仲間が命を落とした後、森と永田は町に降りてアッサリと逮捕され、その他の数名のメンバーも逮捕。
長い間入浴を禁じられていた彼らはその異臭で見つかったのだとか。
そして残った5名が追い詰められ、あさま山荘にたどり着き、立てこもり、あの有名な銃撃事件を起こす・・・

優秀で、でもどこか未熟な若者達が、自分達の力で国を変えれるかも知れないと熱くなったあの時代。
今の若者達からすれば考えられない事で、それは勇敢で頼もしくも見える一方で限りなく恐ろしい。
ある宗教団体が起こした事件と同様、強い思想やストレスを持った人間達が他人の目の届かないところで
集団を作ると、いつしか独裁者が現れ狂気の世界となっていく。
何がルールなのか、何が善なのか悪なのか・・・・その価値観が歪んでいく。
その最も代表的な事件がこの、「連合赤軍事件」。
高度成長期の日本、明るい希望を抱いて猛勉強をして有名大学に入り親を喜ばせた生真面目な彼らが、
そのエネルギーを注いだ方向を誤ったために起こった哀しい事件。
「強い革命戦士になるため」という思いから、本来理不尽なはずの「総括」を強く拒否できないまま命を
落としたとされる被害者達は、安らかに眠れているだろうか・・・
彼らと比べると冷めているようで少し頼りなげに見える今の若者達だけど、それでもその事件以降学生達が
過激な政治思想を声高に語らなくなったことが、唯一の救いなのだろうか・・・・

ところで映画としては、あくまでも「連合赤軍」側からの視点で、そしてかなりリアルな描写で描かれていてるので、
この事件を知る、知らないに関わらず興味深く見れるものではないかな。めっちゃ長いけど・・・
有名俳優さんは殆ど出ていなくて、有名なのは坂井真紀ぐらい。
彼女は永田に最も嫉妬され最も屈辱的に命を落としていった被害者の役柄で、衝撃的な演技を見せてくれた。
又他の若い役者さんも皆、熱のこもった良い演技でした。


non的お気に入り度:





Comment

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こんにちは♪
春休みですね~。
また大阪に帰省されるのかしら?

この映画は連合赤軍に興味を持っている身としてはすごく面白かったです。
こうして客観的に見ると「総括」のアホらしさとかが分かるんだけど、当の本人たちはいたってまじめなんですよね。
それこそ狂気に取り付かれた状態だから。
長かったけど見てよかったと思える作品でした。
2009年03月16日(Mon) 11:00
編集
TBありがとうございました。
この事件が起きたとき、小学生でしたが、なぜこんなことが起きなくてはならなかったのか・・ということにものすごく興味がわいて、子供ながらに赤軍派!なんてな本をむさぼり読んでた早熟な子供でした。
あの頃の自分も相まって、さまざまなことを思い返した次第です。
やはりARATAが素晴らしかったですね。
監督のトークもよろしければどうぞ。
2009年03月16日(Mon) 21:09
編集
◆ミチさまへ
こんにちは♪ TB、コメントありがとうございます☆

春休みはちょっとしかないので、お家にいますよ~

この作品を見ると、あの事件をリアルに感じることが出来ますね。
なかなか見応えのある作品でした。
2009年03月17日(Tue) 08:15
編集
◆sakuraiさまへ
こんにちは♪ TB、コメントありがとうございます☆

私はこの事件の時はまだ殆ど赤ちゃんだったので、
全くと言っていいほどリアルタイムにこの事件を感じることは出来ませんでしたが、
その後この事件を知った時、何故かとても気になり出しました。
真面目で優秀な若者がここまで恐ろしい事件を起こすと言うこと、
それが理解しがたい事に興味が沸いたのだと思います。
ARATAはじめ、それぞれの役者さん、みんな良かったですね(^^)
2009年03月17日(Tue) 08:19
編集
TBありがとうございました。
『陸に上った軍艦』という映画の中で旧日本軍の実にバカバカしい演習、訓練の様子が描かれているのですが、この赤軍メンバーの彼らの真剣な行動もかなりそれと近いような印象を受けました。

戦争もカルト宗教も赤軍も冷静な判断力を失わせるというのが共通点なのかもしれませんね。
2009年04月14日(Tue) 10:28
編集
◆かのんさまへ
こんにちは♪ TB、コメントありがとうございます☆

こういう集団心理ってとても恐ろしいけど、
同じ人間が生み出す物だと思うと興味深い物があります。
興味ある事件がリアルに描かれていて、なかなか見応えがありました。
2009年04月15日(Wed) 14:53












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